2018年7月1日日曜日

学会誌『カルヴァン研究』創刊号を発行しました

『カルヴァン研究』創刊号


 7 月 1 日(日)、学会誌『カルヴァン研究』創刊号(ヨベル、2018年)を発行しました。

「ものとしるし」特集号です。

日本キリスト教書販売(株)(日キ販)取扱書店でぜひお買い求めください。

定価 1,500円(税別)

〈目次〉

発刊にあたって

シンポジウム 1

主題改題〔1〕   野村 信

第 1 回講演

ものとしるし――Augustinus, De doctrina christiana における――   加藤 武

第 2 回講演

ものとしるし――カルヴァンの聖餐論において――   久米あつみ

第 3 回講演

パスカルにおける「ものとしるし」   塩川徹也

特別寄稿

ものとしるし――現代記号論の視覚からの考察   久米 博

シンポジウム 2

主題改題〔2)   野村 信

第 4 回講演

エラスムスにおける「もの」と「しるし」   金子晴勇

第 5 回講演

 8 世紀イコン論における「もの(res)」と「しるし(signum)」   鐸木道剛   

第 6 回講演

カルヴァンにおける「もの」と「しるし」――聖書解釈における視座   野村 信

研究発表

カルヴァンの「聖遺物考」について   岩田 園


執筆者紹介

アジア・カルヴァン学会日本支部役員名簿

アジア・カルヴァン学会日本支部規約

アジア・カルヴァン学会日本支部内規

2018年3月24日土曜日

第 5 回合同研究発表会 報告

第 5 回 合同研究発表会は盛会裡に終了しました。

本会についての経過報告は私の個人的な視点をお許し願い、以下に記します。

三月の年度の終わりの近づく月曜日にもかかわらず、天候にも恵まれ、青山学院大学の17号館の 3 階の小教室は、補助椅子を出して40名を超す出席者で満ちた。昨年出版した好評の『二つの宗教改革』をめぐるシンポジウムが聴衆の関心を惹いたと思われる。

午前にテュービンゲン大学在学中の木村あすか氏による「ストラスブールの牧師夫人、信徒神学者 カタリーナ・シュッツ・ツェル」と題する研究発表があった。宗教改革で活躍した男たちの傍らには女性たちの働きが大いにあったが、近年になって光があてられるようになった。本発表もそういう点でこの点を意欲的に取り組み、これから大いに研究が進むことが期待される。

新館の 1 階の広々した大学食堂でランチを摂り、午後から岩田園氏の「ギヨーム・ファレルと檄文事件 ―フランス語圏宗教改革の転機― 」と題する発表が行われた。上智大学4年生であるが、研究も発表もしっかりしていた。カルヴァンより先に宗教改革の運動に加わり、ヌーシャテルで檄文や印刷などを指揮し、広範に活動したファレルに焦点をあてた。これからさらに学びを深めてほしい。

その後、「カルヴァンの福音理解 ― その聖書的、包括的視点」と題して私が講演した。カルヴァンには独特な福音理解があったわけではなく、きわめて聖書的、救済史的、教理的な理解にたつ神学をもっていたと論じた。その中でも、近刊予定のカルヴァン・エフェソ書説教第三巻の中から大胆な表現をもってカルヴァンが福音を語る部分を紹介し、さらに福音と霊性という問題をルターと比較して論じた。終了後、フロアから、この問題を長く研究している金子晴勇氏からコメントを頂戴したが、いわく「ルターとカルヴァンでは、ルターがキリストとの主観的な結びつきを熱く語るのに対して、カルヴァンは客観的に見る傾向があり、知的な印象を受ける。しかしルターのほうがとてもわかりやすい」と言われ一同納得した。

最後の企画であるシンポジウムは「『二つの宗教改革』を巡って―訳者、編集者たちによる自由な語り合い」と題して、和田光司氏(聖学院大学教授)の司会のもと、金子晴勇氏(岡山大学名誉教授)、竹原創一氏(立教大学名誉教授)、田上雅徳氏(慶應義塾大学教授)と私で自由な感想を発表した。

金子氏は、中世哲学の後期において宗教改革がパラダイムの展開を引き起こしたとオーバーマンが指摘した点を高く評価し、これに焦点をあてて論じた。

竹原氏は、続いて神に関するトマスの存在論的立場から人格論的に立場が転換したという点をめぐって必ずしもそう言い切れない部分があることを指摘された。

田上氏は、政治的な視点から、オーバーマンの提唱する亡命者カルヴァンに光を当て、国家との関連で論じた。

私は網羅的に印象的な部分を紹介した。

この後のフロアからいくつかの質問があり、来年のこの会での再会を期待しつつ、閉会した。

(野村記)


2018年3月1日木曜日

第 5 回アジアカルヴァン学会・日本カルヴァン研究会合同研究発表会 開催報告



日時 2018年 3 月19日(月)11時00分ー16時30分
会場 青山学院大学青山キャンパス17号館 3 階(17305号室)

主題「カルヴァンとその周辺」

11時00分
「ストラスブールの牧師夫人、信徒神学者カタリーナ・シュッツ・ツェル」
テュービンゲン大学博士課程学生 木村あすか

13時30分
「ギョーム・ファレルと檄文事件ーフランス語圏宗教改革の転機ー」
上智大学文学部史学科4年在籍 岩田 園

14時15分
「カルヴァンの福音理解ーその聖書的、包括的視点」
東北学院大学教授 野村 信

15時15分
シンポジウム
『二つの宗教改革』を巡って 訳者、編集者たちによる自由な語り合い
司会 和田光司(聖学院大学教授)

   金子晴勇(岡山大学名誉教授)
   竹原創一(立教大学名誉教授)
   田上雅徳(慶應義塾大学教授)
   野村 信(東北学院大学教授)

問い合わせ sn111@hotmail.co.jp(野村信)

(報道)キリスト新聞 2018年4月11日付け(以下、全文写し)

 カルヴァン合同研究発表会 シンポジウムに翻訳者らも参加 2018年 4 月11日

 アジア・カルヴァン学会日本支部(野村信代表=東北学院大学教授)と日本カルヴァン学会(同)は 3 月19日、「カルヴァンとその周辺」と題した合同研究発表会を青山学院大学(東京都渋谷区)で開き、約50人が参加した。

 学生による研究発表の後、野村氏が「カルヴァンの福音理解――その聖書的、包括的視点」と題して講演。カルヴァンは、1532~33年ごろ、福音主義に回心したと言われる。その最初期の著述であるピエール・ロベール・オリヴェタンによる仏語訳聖書(1535年)の序文に、カルヴァンが生涯貫いた神学的視座が表れていると野村氏は言及。その視座は救済史的、全体的視野で「福音」を説明するものであり、カルヴァンの代表的著述『キリスト教綱要』の全体枠になっていると主張した。

 また、カルヴァンとルターを比較した場合、両者とも福音的な説教をしているが、ルターは「信仰によるキリストとの直接的、霊的結合」を、カルヴァンは「信仰による聖書の中にある霊的、心理的結合」をそれぞれ霊性の原点にしているとし、二者には隔たりがあると思われがちだが、信仰と言葉(=聖書)は切り離せないので両者は異なるものではないと指摘した。

 後半は和田光司氏(聖学院大学教授)による司会のもと、「『二つの宗教改革』を巡って――訳者、編集者たちによる自由な語り合い」と題するシンポジウムが行われた。昨年9月に日本カルヴァン研究会と日本ルター学会が共同で翻訳・出版した『二つの宗教改革――ルターとカルヴァン』(H.A.オーバーマン著、教文館)に携わった金子晴勇(岡山大学名誉教授)、竹原創一(立教大学名誉教授)、田上雅徳(慶應義塾大学名誉教授)、野村の各氏がそれぞれ感想を披露した。

オーバーマン『二つの宗教改革』シンポジウム

 同研究発表会は、来年の 3 月に次回の開催を予定している。